誰にも触れられないまま、強がって生きてきた夜


夜になると、急に静かになる。

音が消えるというより、自分の中の余計な力が抜けていく感じに近い。

昼間は、わりと平気だ。
仕事もこなすし、人とも普通に話す。
弱っているようには見えないと思う。
たぶん、そう見せてきたし、そうであろうとしてきた。

でも、夜だけは少し違う。

 

誰かとぶつかるわけでもないのに、
誰にも触れられないまま、一日が終わっていく。


それが当たり前になりすぎて、
「寂しい」と言う言葉すら、どこか他人事になっていた。

 

強がってきた、というより、
強がるしかなかったのかもしれない。

頼らない方が楽だと思っていた。
期待しなければ、裏切られることもない。
自分で自分を処理できるなら、その方が効率的だと。
そうやって、気づかないうちに距離を取るのが上手くなった。

でも夜になると、
その距離が、急に広く感じることがある。

賑やかな場所が合わなくなったのも、
たぶんその頃からだ。
騒がしさの中にいると、余計に自分の輪郭が浮き上がる。
笑っていても、ちゃんとそこにいない感じがする。

静かな場所のほうが、楽だった。
何かを求められない空気。
ちゃんとしなくていい時間。
言葉を選ばなくていい沈黙。

誰かに触れられたい、というより、
触れられても平気な状態でいたかった。
無防備になりたいわけじゃない。
ただ、力を抜いたままでいられる時間がほしかった。

強がって生きてきた夜は、
決して間違いじゃなかったと思う。
そうしないと保てなかった時期も、確かにあった。

 

ただ、
ずっとそのままでいなくてもいい夜が、
どこかにあってもいいんじゃないか、
そう思えるようになっただけだ。

 

今すぐ何かを変える必要はない。
誰かに説明する必要もない。
今日は、そう感じただけで十分だと思う。

夜は、そういうことを考えさせる。


そしてたぶん、
考えすぎなくていい場所も、
静かに、どこかに残っているはず。




▶︎ 静かに過ごせる場所については、プロフィール欄にまとめています。